消える血糖記録を残す|Guruko · 第07回 / 全10回

貯めた記録を読む単位 — TIR・GMI・CV と AGP

執筆 Remosia Co., Ltd 公開 2026-08-01 読了 約7分

この記事の要点

  • TIR は「範囲内だった点の数 ÷ 全部の点の数」。GMI(%)= 3.31 + 0.02392 × 平均血糖(mg/dL)。
  • 同じデータでも、どの範囲を・どの期間で数えたかで数字は変わる。目標範囲は主治医と決める。
  • AGP(時刻別の中央値とばらつきの帯)は日数が少ないと描かれない。公式アプリの日内パターンも最低5日ぶんが要る。

診察や記事で TIR・GMI という言葉を見かけたことがある方へ向けた記事です。

前回は、旅行や機種変更から記録を守る手当てを扱いました。守った記録は、読めて初めて意味を持ちます。ところがこれらの指標は、意味より先に名前だけが耳へ入ってくることが多いものです。

たとえば、こんな場面です。

診察で「範囲内が68%ですね」と言われる。

うなずいたものの、その数字が何なのか分かっていない。68%は良いのか悪いのか。何と比べているのか。目標は70%だと聞いたことがあるが、それが自分に当てはまるのかも判断できない。

数字を受け取るだけで、読めていない。

並んだ数字の裏側にある形が、少しずつ見えてくる様子

TIR は「範囲内だった点の数 ÷ 全部の点の数」でしかありません。 割り算ひとつです。自分でも計算できます。

読み終えると、自分の1週間の数字を出せて、その数字の限界も説明できるようになります。表計算があれば15分です。

何を、どの期間で数えたかで変わる

指標が分かりにくいのは、計算が難しいからではありません。「どの範囲を」「どの期間で」数えたかによって、同じ人でも数字が変わるからです。

ここを押さえると、数字が動く理由が分かります。まず、それぞれが何を数えているのかを見ていきます。

なお、センサーが測っているのは間質液という組織の水分で、指先で測る血糖値とは5〜10分ほどのずれが生じることがあります(アボットの説明)。これから扱う数字は、すべてその値をもとにした集計です。体調と表示値が合わないときは、集計より先に自己測定と医療者の指示に従ってください。

自分で計算する

書き出したデータが表計算にあれば、次の順で出せます。

TIR(範囲内の割合)

範囲内だった点の数を、全部の点の数で割ります。

例えば14日ぶんの記録が1,344件あって、そのうち941件が70〜180 mg/dL に入っていたなら、941 ÷ 1,344 = 0.70。70% です。

15分ごとに1点なので、1日あたり96点、14日で1,344点になります。この件数が想定より少ないときは、取りに行けていない時間があったということです(前々回の記事で扱った欠測です)。

ここで重要なのは、「範囲」を決めるのは自分だという点です。 70〜180 で数えるか、80〜160 で数えるかで、同じデータから違う数字が出ます。目標とする範囲は人によって違うので、自分の範囲は主治医と決めてください。 一般に示される70〜180という値は、成人の1型・2型糖尿病について国際的な合意(Battelino et al., Diabetes Care 2019)が示した目安であり、妊娠中の方、高齢の方、低血糖を起こしやすい方では異なります。

GMI(推定の HbA1c)

平均値から計算します。式はこれだけです。

GMI(%)= 3.31 + 0.02392 × 平均血糖(mg/dL)

平均が159 mg/dL なら、3.31 + 0.02392 × 159 = 7.1% になります。

GMI は推定値で、検査室で測る HbA1c とは一致しません。 これは誤差ではなく、そもそも別のものを測っているためです(Bergenstal et al., Diabetes Care 2018)。検査値と数字が違っても、どちらかが間違っているわけではありません。治療の方針は検査値と医療者の判断によります。

SD と CV(ばらつき)

SD は標準偏差で、表計算の関数で出ます。CV はそれを平均で割った割合です。

CV(%)= SD ÷ 平均 × 100

SD が52、平均が159なら、52 ÷ 159 = 0.327 で 32.7% です。同じ平均でも、CV が小さいほど値の振れが小さかったことになります。

期間を変えて何度も見たい場合

手計算は1回やれば仕組みが分かりますが、毎週続けるのは大変です。期間を変えるたびに、データを切り出して数え直すことになります。

  • 年に数回、診察前に確認するだけなら、公式アプリのレポートで足ります。手計算も要りません。
  • 期間を変えて何度も見たいなら、計算してくれる道具のほうが早いです。

後者を選ぶ場合、私たちが作っている Guruko では、期間を指定すると同じ数字が出ます。

統計画面。14日間の範囲内70%、GMI 7.1%、平均159 mg/dL、CV 32.7%、SD 52 mg/dL が表示されている

画面の数値は説明用のサンプルです。実在の測定値ではありません。

先ほど手で計算した数字と同じものが並んでいます。捕捉率と件数(1,344件)も出るので、欠測があった期間かどうかも同時に分かります。

そして、この画面の70%という数字は、自分が設定した範囲で数えた結果です。

設定画面。目標範囲の下限70 mg/dL・上限180 mg/dL と、5区分のしきい値が変更できる

範囲を変えれば、同じデータでも割合は変わります。記事の数字と自分の画面の数字が違っても、設定が違えばそうなります。繰り返しになりますが、この範囲は主治医と決めてください。

1日のクセを見る(AGP)

もう1つ、時刻ごとの傾向を見る方法があります。複数日を24時間に畳んで重ねる図で、AGP と呼ばれます。

AGP 画面。14日ぶんを時刻で重ねたパーセンタイル帯と、3つの食事のピークが見える

真ん中の濃い線が中央値、その周りの帯がばらつきの範囲です。帯が細い時間帯は毎日同じような動きをしていて、太い時間帯は日によって違う、と読めます。

日数が少ないと帯は出ません。 1つの時刻に何日ぶんかの点が集まって初めて「ばらつき」が計算できるためです。数日ぶんしか貯まっていない段階では、線が途切れたり、帯が描かれなかったりします。公式アプリのレポートでも、日内パターンの表示には最低5日ぶんが必要とされています(アボットの説明)。

貯めることが、そのまま読めることにつながるのはこの部分です。

この方法が向かない場合

年に数回の確認なら、公式アプリのレポートで十分です。 同じ指標が計算済みで出てきます。

期間の指定には制限があります。 当日を含む期間は指定できません(進行中の日を混ぜると、その日の分母が中途半端になるためです)。「昨日まで」で区切ることになります。

数字が下がった日を、自分の失敗として受け取らないでください。 TIR は生活の条件、体調、薬の効き方など多くの要因で動きます。数字は相談の材料であって、評価表ではありません。何をどう変えるかの判断は、医療者と一緒に決めるものです。

今日、直近1週間の TIR を出す

全期間を計算しようとしないでください。

書き出したデータから、直近1週間だけ切り出して、範囲内の点の数を全体で割ってみてください。それで今日は終わりです。

一度自分で計算すると、画面に出ている数字が何を数えたものかが分かります。次に診察で数字を言われたとき、「どの範囲で、何日ぶんですか」と聞けるようになります。

Guruko について

Guruko は、FreeStyle Libre の血糖を LibreLinkUp 経由で受け取り、90日の上限なく端末内に蓄え続ける iPhone / Apple Watch 向けのビューアです。長期の蓄積・グラフ・統計(TIR / GMI / CV / SD)・AGP・時間検索・CSV 書き出しは無料で使えます。

Guruko は医療機器ではありません。本記事は記録の残し方と読み方を扱うもので、治療の判断には使えません。センサーの値と体調が合わないとき、低血糖が疑われるときは、公式の機器と医療者の指示に従ってください。FreeStyle Libre / LibreLinkUp は Abbott Diabetes Care の商標で、Guruko は Abbott の公式製品ではありません。